なぜ子どもは褒めると伸びるのか?脳の仕組み






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なぜ子どもは褒めると伸びるのか?脳の仕組み

「また怒っちゃった…」「何回言っても聞いてくれない…」。毎日の育児の中で、そんなふうに自分を責めてしまうこと、ありませんか? 実はこれ、パパやママのせいじゃないんです。子どもの脳の仕組みを知ると、「怒るよりも褒めた方がいい」理由がスッと腑に落ちます。今日はその脳の話を、できるだけわかりやすくお伝えしますね。

子どもがこちらの言うことを聞いてくれないとき、つい声が大きくなってしまいますよね。でも怒ったあと、子どもがシュンとしているのを見て「逆効果だったかも…」と感じたことがある方は多いはず。

実はこれ、脳の話なんです。

怒られたときと褒められたとき、子どもの脳の中ではまったく違うことが起きています。そしてそのどちらが「次の行動につながるか」も、脳科学の研究でかなりわかってきました。

褒められた子どもの脳で起きていること

子どもが褒められたとき、脳の中ではドーパミン(簡単に言うと「やる気スイッチ」を入れてくれる脳内物質のこと)がドバッと出ます。このドーパミンは、脳の中にある「報酬系」と呼ばれる回路を活性化させます。fMRIを使った研究では、人はポジティブなフィードバックを受けると脳の線条体(せんじょうたい)(簡単に言うと「ごほうびセンター」のこと)が活発に反応することがわかっています。(※Izuma et al., 2008; Lin et al., 2012)

つまり、褒められると脳は「いま自分がやったこと=いいこと!もう一回やろう!」と記憶するんです。これが、褒めることで良い行動が繰り返されるメカニズムです。

一方、怒られたときはどうでしょうか。脳の中ではストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、恐怖や不安を感じる「扁桃体」が過剰に反応します。すると、考えたり判断したりする前頭前皮質の働きが抑えられてしまいます。つまり、怒られている最中の子どもは、「何がいけなかったのか」を考える脳の状態ではないのです。(※McEwen, 2016 / Harvard Center on the Developing Child, 2018)

怒ることが「まったく意味がない」というわけではありません。でも脳科学的に見ると、怒ることで伝わるのは「恐怖」であり、「学び」ではないことが多いのです。

じゃあ、どう褒めればいいの?

ここで大事なのは、褒め方にもコツがあるということです。

コロンビア大学のMuellerとDweckの有名な研究(1998年)では、子どもを「頭がいいね!」と能力を褒めたグループと、「がんばったね!」と努力を褒めたグループを比較しました。すると、能力を褒められた子どもたちは、難しい課題にぶつかったとき、やる気を失い、パフォーマンスが下がってしまったのです。一方、努力を褒められた子どもたちは、失敗しても粘り強く取り組み続けました。(※Mueller & Dweck, 1998)

さらに、シカゴ大学とスタンフォード大学の共同研究(Gunderson et al., 2013)では、1〜3歳のお子さんへの親の褒め方を観察し、5年後の子どものやる気を追跡しました。その結果、「がんばったね」「いい方法を考えたね」のようにプロセス(過程)を褒めていた親の子どもは、7〜8歳になったとき、「努力すれば自分は伸びる」という前向きな考え方を持っていたのです。

日常でできる具体的な声かけはこんな感じです。

「すごい!天才!」(→能力への褒め)
「最後までがんばったね!」(→努力への褒め)
「自分で考えてやってみたんだね!」(→工夫への褒め)
「昨日よりできるようになったね!」(→成長への褒め)

ポイントは、結果ではなく「やったこと」に目を向けること。「えらいね」のひと言でも、何がえらかったのかを具体的に伝えてあげると、子どもの脳にはしっかり届きます。

「また怒っちゃった」から抜け出せた、わが家の話

偉そうに書いていますが、僕も最初から褒め上手だったわけではありません。

3歳の娘がお箸を使いたがるのに、うまくつかめなくておかずをポロポロ落とすたびに「もう!ちゃんと持って!」と言ってしまっていた時期があります。毎食のように怒って、娘はビクッとして固まって、食事の時間がお互いにとって憂うつなものになっていました。

あるとき、ふと思ったんです。「そもそも3歳の手で、お箸をうまく使えるわけないよな」と。脳科学的に考えれば、手指の細かい動きをコントロールする運動野はまだ発達の途中。落とすのは当たり前のことだったんです。

それからは、落としても「お箸で持とうとしたんだね!」と声をかけるようにしました。すると、娘も嬉しそうに「もっかい!」と自分からチャレンジするようになったんです。怒っていたときには絶対に見られなかった姿でした。

声かけを変えただけで、食事の時間がこんなに変わるのかと驚きました。脳の仕組みを知っていてよかったなと、パパとして心から思った出来事です。

PTワンポイント

理学療法士として脳の仕組みを学んできた立場から一つだけお伝えしたいのは、「褒める」は才能ではなくスキルだということ。最初からうまくできなくて当然です。完璧じゃなくていいんです。「今日も怒っちゃった」と思った日は、寝る前にひとつだけ褒めてあげてください。それだけで、お子さんの脳にはちゃんと届いています。

まとめ

子どもを褒めると脳内でドーパミンが分泌され、良い行動が強化されます。一方、怒るとストレスホルモンが出て思考力が下がります。褒めるときは「頭がいいね」ではなく「がんばったね」と、プロセスを褒めるのがポイント。結果よりも過程に目を向けることで、子どもは失敗を恐れず挑戦できるようになります。今日からひとつ、声かけを変えてみませんか?

怒ってしまう自分を責めないでくださいね。
こうして「もっといい関わり方はないかな」と調べているあなたは、
もう十分すぎるくらい、すてきなパパ・ママです。

参考文献

  • Mueller, C. M. & Dweck, C. S.(1998)”Praise for Intelligence Can Undermine Children’s Motivation and Performance.” Journal of Personality and Social Psychology, 75(1), 33-52. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9686450/
  • Gunderson, E. A., Gripshover, S. J., Romero, C., Dweck, C. S., Goldin-Meadow, S. & Levine, S. C.(2013)”Parent Praise to 1- to 3-Year-Olds Predicts Children’s Motivational Frameworks 5 Years Later.” Child Development, 84(5), 1526-1541. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23397904/
  • National Scientific Council on the Developing Child(2018)”Understanding Motivation: Building the Brain Architecture That Supports Learning, Health, and Community Participation.” Working Paper No. 14. Harvard University. https://developingchild.harvard.edu/
  • McEwen, B. S.(2016)”Stress Effects on Neuronal Structure: Hippocampus, Amygdala, and Prefrontal Cortex.” Neuropsychopharmacology, 41(1), 3-23. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4677120/

たいぺい
理学療法士(PT)/脳外科病棟10年勤務/2児のパパ
「子どもの行動には、脳科学的な理由がある」をテーマに発信中


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